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▼今週の注目記事  納税3816号1面より

4月からいよいよスタート
相続登記の義務化

 相続の際に遺族が登記手続きをせず、登記上で誰が持ち主なのか確認できない土地が増えたことで不動産登記法と民法が改正され、4月からは相続した不動産の登記が義務化される。相続不動産の取得を知ってから3年以内の登記申請を義務付け、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料が科されることになる。親や親戚から相続したまま手続きをしていない不動産は、過去のものを含めて漏れなく対象となる。保有する不動産の洗い出しや相続人の特定、遺産分割協議、必要書類の入手など、準備ができていなければ急ぐ必要がありそうだ。

放置すれば10万円の過料に

 相続登記とは、相続で不動産を取得したときに不動産名義を相続人に変更することをいう。相続時に名義変更の登記がされないと、登記簿上の名義は死亡者のままとなり、放置され続けて世代交代が進めば、法定相続人の数はねずみ算式に増えてしまう。そのうち、それぞれの相続人自身も土地の存在を知らないようになり、所有者が定まらないまま荒れるに任せた土地が全国で発生してきた。国土交通省の調査によれば、登記簿で土地の所有者の所在を知ることができなくなった原因のうち、66.7%が相続時の未登記だった。これまでは相続時に登記を行うかどうかは相続人の判断に委ねられていたため、相続人が固定資産税などの税負担を免れたり管理の煩わしさを避けたりといった理由から放置するケースが多く生じていた。

 今回の改正では、4月以降に発生する相続だけでなく、これまで発生した相続も対象となる点が見逃せないポイントだ。過去に相続した不動産については、改正法が施行される今年4月から3年後、つまり2027年3月31日が登記期限となる。この日までに名義変更を行わない全ての不動産が、10万円の過料の対象として持ち上がってくる。

相続登記しないデメリット

 相続登記をしないと、具体的にはどのようなデメリットが生じるのだろうか。

 まずは、第三者に建物や土地を売却できないことが挙げられる。不動産の売買では、不動産の代金決済と同時に所有権を移転するのが一般的であるが、相続登記していなければ土地の名義は被相続人のままであり、これを買い手の名義に移転登記をすることはできない。

 次が、登記をしていないと不動産を担保に金融機関から融資を受けられないことがある点だ。金融機関からお金を借りる際は土地を提供して抵当権を設定することが多いが、融資の審査時に登記事項証明書の内容をチェックされるので、相続人名義の不動産でなければ融資は通らないことになる。

 そして、相続開始から長期間が経過することでさらなる相続が発生すると、相続人の数は想像以上に膨れ上がる。当事者が所在不明の場合、すぐに登記を含めた相続の手続きをすることができず、相続分を確定することが困難な状況になる。何世代も相続登記がされていない不動産では、相続人が数十人に膨らみ、その調査だけで相当の時間がかかり、相続登記の手続き費用や手数料も高額になってしまう。

 さらに、相続人のなかに借金のある人がいれば、不動産が差し押さえられる可能性もある。相続人にお金を貸している債権者は、債権を守るために代位登記という、相続人の代わりに行う登記をし、不動産を差し押さえることができるからだ。

 ほかにも、土地に無断占有者が現れた場合には、その退去を求めるに当たって登記名義人が被相続人のままでは権利関係の証明は不可能となる。退去要求に手をこまねいていれば、無断占有者が「時効取得」を理由に登記申請してしまうこともあり得る話だ・・・(この先は紙面で…)

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