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▼今週の注目記事  納税3800号1面より

Jリーグも怒られた
居住者・非居住者≠フ境界線

 サッカーJリーグの複数クラブで11月10日までに、複数の外国人選手が国税局から申告漏れを指摘されていたことが分かった。いわゆる助っ人外国人を税負担の比較的軽い「非居住者」として処理していたが、実態に照らして「居住者」に当たると認定された。海外に生活の拠点を設けていたり、1年の大半を国外出張で飛び回ったりしている経営者が、当局から「居住者」判定を食らって多大な税負担を課される例は枚挙にいとまがない。居住者と非居住者の境界線はどこにあるのか、過去の裁判例をもとにひもとく。

税負担の差は3倍近くに

 ガンバ大阪や名古屋グランパスなどJリーグの複数クラブが当局に指摘されたのは、いわゆる「助っ人外国人」選手について、所得税や住民税が契約実態に見合っていなかったという点だ。Jリーグではこれまで慣習として、助っ人外国人は税法上の「非居住者」として扱い、クラブ側が源泉徴収分も負担するという税務処理を行ってきた。これはリーグ開始当初、多くの外国人選手が1シーズンのみの契約で帰国するケースが多かったことが理由といわれる。

 この点について1999年6月にJリーグと日本野球機構が国税庁に確認したところ、@シーズンオフに居住場所を引き払う、A契約が1年以下、B家族の帯同がないこと――のすべてを満たすことで、非居住者としての扱いが認められたのだという。

 だが近年では日本のサッカースタイルにフィットした外国人選手と複数年契約を結ぶケースも増え、これが当局から「居住者に該当する」と判断された模様だ。今回の事態を受けて、Jリーグ側は改めて全60クラブに対して居住と非居住に関する要件の確認徹底と適正な税務対応を求めた。

 今回のケースはプロスポーツという特殊な世界の話であり、当局による特例的な扱いが事の発端となったが、そもそもそうした特例を設けざるを得なかった背景には、税法上の「居住者」「非居住者」の判定が非常に難しいという根本的な問題がある。

 所得税法では、国内に住所があるか居住の場所を1年以上持つ個人を「居住者」、それ以外の人を「非居住者」として扱い、両者では所得に対する課税範囲、税率が大きく変わる。「住所」の有無は生活の中心がどの国・地域であるかといった客観的事実によって判定し、また居住の場所はその人が現実に住んでいるか否かで判断する。住民票があるかどうかは関係なく、例えば生活の拠点が自宅ではなくホテル住まいだったとしても、それは住所になり得るということだ。

 非居住者であれば日本国内を源泉とする所得のみが課税され、税率も20.42%の分離課税で完結する。一方、居住者であれば国内だけでなく国外源泉所得もすべて課税対象となり、さらに税率も最高45%の累進税率に加えて10%の住民税の対象となる。非居住者なら税率が約20%にとどまるところを、居住者なら最高55%と、両者には3倍近い税負担の差が生じるわけだ。

 それだけに国内と海外を行ったり来たりする富裕層にとっては両者の境界線が気になるところだが、「住所」に関する明確な規定は税法に存在しない。そのため、居住者か非居住者かの線引きは、納税者と当局の間でたびたびトラブルになるポイントとなってきた。そうした数々の裁判例のなかから、少しでも判断のヒントを見つけたい・・・(この先は紙面で…)

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